世の中では「コーチング」という言葉が使われ、新人育成や後輩指導にも活用されています。
看護業界でも良く耳にするようになったコーチングですが、実際にコーチングしようと思っても上手にできないケースで悩んでいる人もいます。
どのようにコーチングを使って行ったらいいのか、一緒に学んでいきましょう!!
初めからコーチングすると逆効果になることがある
結論から言うと、新人指導などでは初めからコーチングすることは得策ではありません。コーチングを頑張りすぎると、逆に相手のモチベーションを下げてしまうことがあります。
コーチングは「適切なタイミング」で実践してこと、効力が発揮されます。効果的にコーチングを発揮するならば、次の2つを知っておく必要があります。
- ティーチングとコーチングの違いを知る
- ティーチングとコーチングの使い分ける方法を知る
ティーチングとコーチングの違いを知る
ご自身で、「ティーチングとコーチングの違い」を説明できますか?
コーチングが苦手とか難しいと考える人の多くは、「ティーチングとコーチングの違い」を理解していないことが大きな要因となるケースがあります。
先ずはティーチングとコーチングのそれぞれの特徴を見ていきましょう!
ティーチングとは
ティーチングは指導者側が持っている知識・技術を受け手へ「教える・伝える・アドバイスする」技術です。受け手が未経験あるいは未熟な知識・技術・分野を先行している指導役が自分の経験・知識・技術を基に「伝承」していき、受け手が同じように知識・技術を得ることが目的となります。
ティーチングには2種類ある
ティーチングには一般的に2つの種類があると言われています
- 積極的ティーチング
- 消極的ティーチング
積極的ティーチング
受け手に具体的に指図して指示をする。
例)「○○してください。」「○○しましょう。」など
消極的ティーチング
受け手の主体性・自立性を少し尊重した助言をする。
例)「○○してはどうですか?」「○○してはいかがですか?」など。
ティーチングのメリット・デメリット
ティーチングのメリットは、フォロワーの知識が浅い、あるいは未経験な時期に有効なことです。
デメリットは、「指導者側の知識・技術を越えた内容の指導はできないこと」です。
例えば、新人看護師さんに2~3年目の看護師さんが基礎看護技術の指導はできますが、マネジメントについて指導することが一般的に難しいでしょう。2~3年目の看護師さんで通常マネジメントを実践する機会が少ないからです。
ティーチングのメリットデメリット
- メリット ・・・受け手が未経験・知識のないものについては有効
- デメリット・・・指導者側の技術・知識を越えた内容のティーチングはできない
コーチングとは
「受け手から引き出す」ことがコーチングにとっては大切です。
ティーチングがフォロー側のもっているものを提供するのに対して、コーチングは相手のもっているものを引き出して、自ら答えを出していく技術です。
自ら答えを出すと行動につながる
コーチングにおいて「引き出す」とは、受け手自身が認識できていない情報を引き出し、主体的に行動するための道しるべを作るために必要な手順です。
人から教えられたり、説得されて移す受動的な行動より、自ら考えて理解し納得した能動的な行動は圧倒的に目標を達成するまでのスピードが違います。
コーチングのデメリットは「持っていないものは引き出せない」
コーチングは相手の主体的な行動を促すために有効な技術です。しかし、「そもそも相手が引き出せるほどの情報をもっていない」状態では効果はでません。
よくある例として、新人看護師さんに先輩がアセスメントを求める場面が想像できます。新人なので、当然持っている知識量も経験も少ないです。しかし、先輩看護師さんは必死に新人さんの意見を引き出そうとしています。これでは上手くコーチングはできません。
この場合、大切なのは「正確にアセスメントできているか?」ではなく「アセスメントに不足しているものは何か?」を新人看護師さんが自分で気づくことです。後者においては、上手くするとコーチングが活きてくる場合があります。
ティーチングとコーチングを使い分ける
両者を上手に使い分けるには、受け手をどのような位置付けるかによって変わります。
受け手の位置づけは2通り
- 受け手の役割やポジションで位置付ける
- 受け手の成長段階で位置付ける
受け手の役割やポジションで位置付ける
受け手の今の役割やポジションによってティーチングとコーチングを使い分けます。
一般的には・・・
- 新人看護師や若手看護師・・・ティーチングが主体、徐々にコーチングを入れていく
- リーダーや中堅看護師・・・コーチングが主体、時々ティーチングを混ぜていく
コーチングは相手がある程度成熟していないと思うように効果を得にくいです。リーダー看護師や中堅看護師など看護実践力が培われている人にはコーチングすることで主体的に考え、行動するきっかけが作れます。
受け手の知識・技術を4つの成長段階で位置付ける
4つの成長段階
- 【依 存】・・・未経験や未習得な状態。自身では全く実行や問題解決が出来ない
- 【半依存】・・・経験はあるが自信はない。少しは実行し解決できるが、助言が必要
- 【半自立】・・・経験があり自信をもっている。大体のことは実行、自己解決できる
- 【自 立】・・・完全に実行あるいは自己解決できる
受け手の知識・技術を【依存】から【自立】まで成長させていくことが目的です。そのために段階に応じてティーチングとコーチングを使い分けます。
- 【依 存】・・・先ずは「積極的ティーチング」で指導していく
- 【半依存】・・・「消極的ティーチング」で助言し補っていく
- 【半自立】・・・「コーチング」によって受け手の行動を支持していく
- 【自 立】・・・関与する必要なし
位置付けは複雑に絡み合っている
当然のことながら、人は完全に2通りで位置付けられません。新人看護師や若手看護師でも能力や自立度によってコーチングが主体になる場面もあります。逆にリーダー看護師や中堅看護師でもマネジメントなどより高度なものになれば、先ずはティーチングから入ることが必要になってきます。
まとめ
- ティーチングとコーチングの違いを知る
- ティーチングには「積極的ティーチング」と「消極的ティーチング」がある
- ティーチングは受け手が未経験・習得なものに対しては有効
- ティーチングは指導者側の知識・技術を越えたものはできない
- コーチングは「受け手から引き出す」ことが大切
- 自発的な答えは、他者から与えられた答えより行動の原動力になる
- ティーチングとコーチングを使い分ける
- 受け手の役割やポジションにより使い分ける
- 受け手の知識・技術の成長段階により使い分ける
- 位置付けは複雑に絡み合っている
上手に指導して、自分も受け手も豊かな看護師ライフを送りましょう!!
<参考図書>
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