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看護職の社会人基礎力~考え抜く力の2つの意味と3つの要素~

社会人基礎力

 「考え抜く力」は看護職にとって必須のスキルです。社会人基礎力3つの能力の1つである「考え抜く力」を高めることで仕事の仕方も大きく変わります

看護職にとって「考え抜く力」を鍛える意味は2つ

 社会人基礎力の「考え抜く力」が看護職にとってどう意味づけられるのか。結論から言うと以下の2点になります。

  1. 看護の対象となる人の健康問題を考える
  2. 専門職として考える力が求められている

 私たちの看護職の対象は非常に幅広いです。入院する患者さんやその家族、健康に働く人、子供からお年寄りまで。その人たちの健康問題について考える上で、当然ながら考える力は必要になります。

 また、看護という専門性を活かして働くために与えられた仕事をこなすだけではなく、自ら役割を自覚し、課題を発見・解決への導く方法を考えることが求められています。

「考え抜く力」が養われない理由は3つ

 しかし、考え抜く力が必要とわかっていても中々実践できない人も多いのではないでしょうか?考えられない原因は大きく3つの分けられると思います

  1. そもそも「考え抜く力」を鍛える方法を学んでいない
  2. 看護業務が単純化・ルーティン化されつつある
  3. 単純に仕事が忙しい

1.そもそも「考え抜く力」を鍛える方法を学んでいない

 考え抜く力が養われない最大の理由は、「そもそも考え抜く力を鍛える方法を学んでいない」ことです。

 貴方は日頃先輩や上司から「なぜ?」「どうして?」と質問されてすぐに答えられないことはありませんか?そして、「自分の能力が低いから考えられないんだ」と悩んでいませんか?その悩みは、半分正解で半分間違いです。経験の浅い時期は知識・技術の裏付けができていないので、先輩や上司のように深く考えることができなくて当然です。ですが、「考える力」は「鍛えれば伸びる」のであって、一生同じレベルではないとうことも事実です。そしてこれまで鍛える方法を学んでこなかっただけなのです。ですから先ほどの貴方の悩みも半分正解で半分不正解なのです。

 看護職に就くため、専門の養成機関で少なくとも3年は学ぶ必要があります。しかし、考えてみてください。貴方は「考える力」を養われたという実感はありますか?学生の頃は課題の山をこなしていくのが精一杯だったのではないでしょうか?

 実習では必ずといっていいほど看護展開をしますね。これも一つの「考える力」です。看護を学問として捉え、看護の対象となる人のニーズに応えるための思考過程です。しかし、現実には働き始めれば一人の患者さんに関わっていられる時間は想像以上に短く、考えなければならないことも沢山増えます。限られた時間の中で如何に効率的に仕事を進め、かつ患者さんへのケアを充実させるか。こういう「働く上で考えるべきこと」に対しての「考える力」は学校では習っていないはずです。

 あくまで私個人の見解ですが、実践の基礎になる「看護過程の展開方法」は養成機関で学ぶことはできます。しかし、「効率的かつ効果的に看護過程を展開する方法」は養成機関で学ぶのは難しいでしょう。効率的という部分はそれぞれの環境に大きく左右されます。どの医療機関あるいは施設で働くかは学生さん一人一人の判断によるので、養成機関が千差万別に対応するのは不可能です。あくまでベーシックに基礎的な部分を教育することが限界とも言えます。

2.看護業務が単純化・ルーティン化されつつある

 看護の世界も仕事の仕方は大きく変わってきています。特に病院では病床の利用率を上げて収益を伸ばすことも大切です。また、ベッドの回転数を上げることで多くの患者さんを受けいることも必要です。

 クリニカルパスが多く利用され医療や看護の均一化が図られています。このクリニカルパスを用いることで、考えなくても仕事ができるようになったのは事実です。スケジュールパスに沿って患者さんと関わります。これで一定の成果が出せるので、必然的にパスが多ければ看護師の思考作業は減ります。無駄なことを考えなくて済むというメリットもありますが、パスに囚われてしまい患者さんの個別的なケアまで行き届かなくなるリスクもあります。

 私の勤める病院では数年前から標準看護計画を導入しました。標準看護計画は疾患によって看護計画が決まっているので、電子カルテで疾患名を入れて検索すればあっという間に看護計画の出来上がりです(実に便利な世の中になりました)。これもクリニカルパスと同様に看護を均一化されたツールなので立案した時点では個別性は乏しいです。

 クリニカルパスにしても標準看護計画にしても患者さんの個別性が繁栄されにくいですが、決して考えなくていいわけではありません。しかし両者とも一定の水準を満たしているので、それに+αをするかしないかは看護師個人の判断だったり組織としての方針や風土に影響されます。一定の水準を満たしているのだからそれ以上考える必要がないと言われてしまえばそれまでということです。

 ここで勘違いしてほしくないのは、クリニカルパスも標準看護計画を否定しているわけではありません。むしろ現代医療の現場では効率的かつ効果的な手段とも言えます。大事なのは均一化している中でも考えることはあると認識しているかいないかということです。

3.単純に仕事が忙しい

 言うまでもなく看護職の業務量はとても多いです。検温、清潔・排泄ケア、食事介助、創部の処置、検査・手術出し、術後管理、患者指導などなど、上げれば切りがありません。看護師の仕事は分刻みで動くことが多く、常に思考は二転三転しています。慣れてくればある程度の思考スピードは速くなるでしょうが、「考えていることの質」を上げるには容易なことではありません。社会人基礎力の「考え抜く力」という能力は一朝一夕で鍛えられるものではなく、ある程度じっくり腰を据えて考える時間が必要です。特に初歩の段階では思考プロセスを理解して行動に移すまでに多くの時間を要します。それを分刻みに行われる業務内で培うのは容易なことではありません。

考え抜く力の「3つの要素」

 考え抜く力は以下の3つの能力要素によって構成されます。

  1. 課題発見力
  2. 計画力
  3. 創造力

 平たく言ってしまえば、「問題を発見し解決策を考え(課題発見力)、解決策を実行に移し(計画力)、上手く解決できなかったら別のアイデアを出す(創造力)」ということです。このような思考プロセスの代表例がPDCAサイクルではないでしょうか?

 「Plan(計画)」⇒「Do(実行)」⇒「Check(評価)」⇒「Action(改善)」のサイクルを繰り返すのがPDCAサイクルです。察しの良い方なら気づいているかもしれませんが、これってまさに看護過程そのものですよね。

 「情報収集」⇒「アセスメント」⇒「計画立案」⇒「実行」⇒「評価」のサイクルを常に回し続けて看護目標を達成していくのが看護過程です。ほとんどPDCAサイクルと変わらないですね。言い換えるなら看護過程で学ぶ考え方は決して看護独自の方法ではなく社会的に広く使われている考え方ということです。

まとめ

 看護職にとって考え抜く力を鍛える意味は2つ

  1. 看護の対象となる人の健康問題を考える
  2. 専門職として考える力が求められている

 「考え抜く力」が養われない理由は3つ

  1. そもそも「考え抜く力」を鍛える方法を学んでいない
  2. 看護業務が単純化・ルーティン化されつつある
  3. 単純に仕事が忙しい

 考え抜く力の3つの要素

  1. 課題発見力「問題を発見し解決策を考える」
  2. 計画力「解決策を実行に移す」
  3. 創造力「上手く解決できなかったら別のアイデアを出す」

 「考え抜く力」は看護職にとって最も重要な能力です。ぜひしっかり磨いて豊かな看護師ライフを送ってください。

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